パート収入でも安心!60代から始める介護費用対策と公的制度の活用法
はじめに:60代からの介護費用、漠然とした不安を具体的に考える
60代を迎え、パート収入で家計を支えている方にとって、将来の「介護費用」は大きな不安の一つかもしれません。年金だけでは足りるのか、もしもの時に家族に迷惑をかけたくない、といったお気持ちを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
漠然とした不安を解消するためには、まず「介護費用がどのくらいかかるのか」「どのような公的制度があるのか」を正しく知り、自分に合った対策を立てることが大切です。このコラムでは、パート収入でも無理なく始められる介護費用への備え方と、活用できる公的な制度について、分かりやすくご説明いたします。
介護費用はどのくらいかかる?現状を知る
まずは、実際に介護が必要になった場合、どのくらいの費用がかかるのか、一般的な目安を見てみましょう。生命保険文化センターの調査(2021年度)によると、介護にかかる費用は大きく分けて「一時的な費用」と「月々の費用」があります。
- 一時的な費用(住宅改修や介護用ベッド購入など): 平均74万円
- 月々の費用(公的介護保険サービス自己負担分、食費、おむつ代など): 平均8.3万円
介護期間の平均は5年1ヶ月とされており、これらの費用を合計すると、一人あたりの介護費用の総額は平均で約500万円程度になると考えられます。これはあくまで平均値であり、介護の状況や利用するサービスによって大きく変動しますが、一つの目安として心に留めておくと良いでしょう。
費用を抑える強い味方!公的介護保険制度を理解する
介護費用は高額になる傾向がありますが、私たちの強い味方となるのが「公的介護保険制度」です。この制度があることで、介護サービスを利用する際の費用負担を大幅に軽減できます。
公的介護保険のしくみ
40歳以上の国民は全員が介護保険料を納めており、これにより介護が必要になったときにサービスを受けられるしくみです。65歳以上の方(第一号被保険者)は、市町村の認定を受けて「要支援」または「要介護」の状態と認められれば、原則として所得に応じた1割から3割の自己負担で介護サービスを利用できます。
利用できる主なサービスの種類
公的介護保険で利用できるサービスは多岐にわたります。主なものをご紹介します。
- 自宅で受けるサービス(居宅サービス):
- 訪問介護: ヘルパーが自宅を訪れ、身体介護(入浴、食事介助など)や生活援助(掃除、買い物など)を行います。
- 通所介護(デイサービス): 施設に通い、食事、入浴、レクリエーション、機能訓練などを受けます。
- 短期入所生活介護(ショートステイ): 短期間施設に入所し、介護や機能訓練を受けます。家族の負担軽減にも役立ちます。
- 施設に入所するサービス(施設サービス):
- 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などがあります。
これらのサービスを組み合わせることで、ご自身の状態や生活スタイルに合わせた介護を受けることが可能です。
介護費用の自己負担をさらに軽減する制度
公的介護保険を利用しても自己負担は発生しますが、所得に応じてさらに負担を軽減できる制度があります。
高額介護サービス費
ひと月に支払った介護サービスの自己負担額が、所得に応じた上限額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。例えば、一般所得の方の上限額は月額44,400円です。もし1ヶ月の自己負担額が5万円だった場合、5万円-44,400円=5,600円が払い戻されます。所得が低い方ほど上限額が低く設定されています。
特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)
所得が低い方が介護保険施設に入所する際に、食費と居住費の負担を軽減する制度です。市町村の窓口で申請し、認定を受けることで、所得に応じた一定額のみを負担すればよくなります。
これらの制度は申請が必要ですので、利用できる可能性がある場合は、お住まいの市町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターにご相談ください。
パート収入からできる!無理のない介護費用への備え方
では、パート収入でも、どのように介護費用に備えていけば良いのでしょうか。
1. 家計の現状を把握し、無理のない範囲で節約する
まずは、日々の収入と支出を把握することから始めましょう。家計簿をつけたり、最近では家計簿アプリなども手軽に利用できますが、手書きのメモでも十分です。
- 固定費の見直し:
- 携帯電話料金のプランを見直す(格安SIMへの切り替えなど)
- 不要なサブスクリプションサービスを解約する
- 電気やガスの契約プランを見直す
- 変動費の管理:
- 食費は「週〇円まで」と予算を決める
- 外食を少し控える
- 買い物に行く前に必要なものをリストアップする
大切なのは、無理なく続けられる範囲で取り組むことです。我慢しすぎると長続きしませんので、できることから少しずつ始めてみましょう。
2. 少額からでも「介護費用」として貯蓄を始める
まとまった金額を貯めるのが難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、少額からでも「介護費用」という目的を持って貯蓄を始めることが大切です。
- 自動積立を活用する: 銀行の自動積立サービスを利用すれば、毎月決まった日に、決まった金額が自動的に別の口座に貯蓄されます。手動で貯蓄するよりも、忘れにくく、着実に貯められます。
- 「先取り貯蓄」を習慣にする: 給料が入ったらまず貯蓄分を取り分け、残ったお金で生活するようにすると、自然と貯蓄が進みます。
貯蓄の目標額を一度に決めるのではなく、「まずは〇万円を目標に」といったように、小さな目標から始めるのも良い方法です。
3. 地域の相談窓口を積極的に活用する
介護や将来のお金に関する不安は、一人で抱え込まず、専門家に相談することが大切です。
- 地域包括支援センター: 各市町村に設置されており、高齢者の方やそのご家族の総合的な相談窓口です。介護保険制度の利用方法、地域の介護サービス情報、健康相談など、幅広い支援を無料で受けることができます。
- 社会福祉協議会: 生活困窮者への相談支援や、低所得者向けの貸付制度(生活福祉資金貸付制度)などを案内しています。
こうした窓口を積極的に活用することで、適切な情報や支援を得られ、不安の解消につながります。
4. 民間の介護保険を検討する際は慎重に
民間の介護保険は、公的介護保険でカバーしきれない費用を補うための選択肢の一つです。しかし、保険料の負担が家計を圧迫しないか、保障内容がご自身のニーズに合っているかなど、慎重な検討が必要です。
- すでに貯蓄がある程度できているか
- 毎月の保険料を無理なく支払い続けられるか
- 公的制度でどの程度カバーできるかを理解しているか
これらの点をよく考え、必要性を感じた場合は、複数の保険会社のプランを比較検討し、信頼できる保険の専門家に相談することをおすすめします。
まとめ:今から一歩を踏み出し、将来の安心へ
介護費用は、誰もが直面する可能性のある課題です。しかし、漠然とした不安のままにしておくのではなく、今のうちから情報収集を行い、できることから少しずつ準備を進めることで、将来への安心感につながります。
公的介護保険制度や自己負担軽減制度を理解し、賢く活用すること。そして、パート収入でも無理のない範囲で家計管理を見直し、少額からでも貯蓄を始めること。地域の相談窓口を積極的に利用することも、大切な一歩です。
この記事が、あなたの将来のお金計画の一助となり、介護に関する不安を和らげるきっかけとなれば幸いです。今からできることを見つけ、着実に実践していきましょう。